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 一学期までの勉強の成果を試す7月の模試を前にして、現在の段階で伸びてきている生徒は、と言えば男子で春生、女子では祐子だ。祐子は元々、他の大手進学塾の上位クラスにいたのが、事情があって勉強を止めていただけなので、やり始めれば上がってくるのはわかっていたが、春生はどのくらい伸びてくるのかやってみないと確実なことはわからなかった。知識的なことは増えてくるが、何らかの判断を伴う問題に対応していていけるか、そこが未知数だった。

 概して女子の方が男子よりも精神的な成長が早く、おかしな返答をすることも少ない。これは成長の度合いもさることながら、言語的な能力、コミュニケーション能力も元々女子の方が高いということもある。女子の脳と男子の脳を比べると、右脳と左脳をつなぐ脳幹の太さが女子の方が太く、両脳の間のデータのやりとりが速く多量なのだそうだ。また言語野の発達も女子の方が勝っていて、マルチ回線で他者と意思疎通がしやすい。男子はその代わりに、一つのことを深く掘り下げて抽象的に考えるのが得意な脳を持っているといえる。そう言った理由から、概して女の子の話題は人間関係や周囲の現実的なものが多く、男の子の話題は空想的なもの(宇宙の話や目に見えない原子の話なんかも含み)が多い。これを入試にあてはめると、女子は国語、社会が強く、男子は算数、理科が強い、ということになる。もちろん概して言えばの話だが。ここで問題なのは国語という科目の性質上、これが全ての科目に影響してくるということだ。すべてのテストは言葉を介して行われる。ここが弱いとせっかく難しい算数が解けても、社会の高度な知識があっても正解に至らないということがよくある。ここがやっかいなのだ。男子でしかも奥手な春生はここが心配だ。春生もかなり幼いがもっとわかりやすい例として、かつて俺が教えた生徒ですごく奥手な子がいたので、彼の例を紹介してみよう。

 普段から、みんなと同じように授業を受けているのに習ったことがなかなか身に付かない。菅生くんが見かねて休み時間にうろついている彼を捕まえて話をした。

「君は、人の話をいつも単語、単語で理解しようとしてるが、それじゃ意味が半分も受け取れないんだ。もっと『てにをは』を考えて、言葉と言葉の関係に注意しなきゃ」

すると、てにをは、という言葉がわからないようで首を傾げた。

「あ、てにをは、っていうのはだ。助詞のことだ。君はもっと助詞に気を配りなさい」

そこでさらに眉間にしわを寄せて困った表情をするので、横で聞いていた俺が

「おまえ、ひょっとして今、女の子に親切にしろ、って言われたと思ってるんじゃないか?」

と聞いたら、同じ表情のまま激しく頷いた。これが6年生なのだ。めったにいないくらい幼い。

 この子が模試でやらかした間違いを言っておこう。理科である。人体についての知識問題で

『ヒトの消化管において最後の器官は何か』

という質問に対して答えが「肛門」だということはわかった。間違えて「校門」と書く奴もいるが、そこはクリアできた。しかし、問題文に漢字指定がないにも関わらず、正確な漢字がわからず勝手に困り、弱った彼は別の言い方で答えることにした。だがそれも漢字がどうも怪しい。「お尼の穴」と書いては消し、「お屁の穴」と書いては消し、「お屈の穴」と書いてみたもののやっぱりしっくりこない。結局「尻」には至らず、迷走の果てにさらに暴走した彼が最後に書いた答えは「けつの穴」だった。もちろんバツである。模試の採点者も目を丸くしたことだろう。俺が授業中にやる俺の作った確認テストじゃあない(それなら面白いからマルにしたかもしれないが)。れっきとした大手の主催する真面目な模試を真剣に受けて「けつの穴」である。特A級の珍解答であるが、   

「なんでバツなんですか?」

と後日になっても俺に訴えていたから、本人はそれがいかに突飛なことなのかをわからないのだ。それにこれでは本人が気にしていた「漢字で書かなきゃ」という妄想的な規定も守られていない。こんな風に、幼い子というのは「全体を見る」ということが苦手なのだ。ただし、彼の名誉のために言っておくと、確かに受験勉強はパッとしなかったが、実は彼は時々感心なことを言うことがあり、もっと成長した暁には有能な人物になるだろうと俺は思っている。この俺をマジで笑わせたり、あるときには家族のことなんかを話してくれて本気で感動させられたこともある。そのときはバレないようにホワイトボードの方を向いて涙を流したものだった。残念ながら入試にはそんな彼のいいところを見てもらえる機会はない。それだけだ。

 奥手とはいえ、春生もここまでの幼さではない。初歩的なところで間違えてしまうというほどではないだろう。ただ、時間制限のあるテストで応用的なことを的確に判断する、となるといくつもミスが出る可能性は高い。今のところ得意科目も苦手科目もないが、おそらく国語はもう少し時間がかかると予想される。算数はまあまあいい感じだが、この科目はテストでは水物だ。だから理社を頑張らせてきたのは作戦として間違っていないと思う。


 授業中に模試の過去問を科目ごとに解かせてみることにした。今回は偏差値でなく素点で各人の得点をいうと、国算が150点満点、理社が100点満点で

織田  国語117点 算数133点 社会87点 理科92点

今回は国語がやや低迷。しかしまあ安定していい成績だろう。


祐子  国語137点 算数79点  社会54点 理科60点

国語の9割超えはすごい。おそらく偏差値をだせば70台半ばくらまでいくか。この国語力は大きな武器だ。補習してきた理科が6割来たのもよかった。さすがものが違うというか、「やればできる」を見せつけ始めた。


大悟  国語70点  算数108点 社会41点 理科82点

でこぼこ大将軍だったのが、微妙に平均化してきた。これは奴の場合いいことなのかまずいことなのか。でもまた激しく変動しそうなタイプなので、このテストで云々するのは差し控えた方がよさそうだ。


飯田  国語92点  算数52点  社会57点 理科64点

今回、理科はよかった。頑張った成果というか前がサボり過ぎなのを取り戻しつつある。算数はコケた。勉強はしていたと思うが、算数にはこれがあるのだ。小問の(1)で間違えてその数値を使うあとの問題まで尾を引く、今回はそのパターンだ。


かえで 国語108点 算数70点  社会67点 理科58点

苦手だった算数がよくなってきた。国語は安定している。もう少しだろう。かえでは大人の目線というか全体を捉える感覚が優れている。中学入試にはいいアドバンテージと言える。


ナナ  国語96点  算数85点  社会58点 理科47点

得意の国語がパッとしなかったが、全体としてはまあまあ。だがそろそろナナも理科を補習するかな。


春生  国語71点  算数91点  社会55点 理科70点

算数が伸びてきたのと、補習の効果が出て理科が7割。これは褒めて上げよう。自信をつけていって欲しい。


りる  国語88点  算数42点  社会48点 理科42点 

えらいへこんだ。算数は撃沈。本人もがっくりきたかと思いきや、彼女はこういうときゲラゲラ笑う。まあ、いつも明るいのはいいことだ。ただし、しっかり解き直しをして次に備えるならば、だが。


南出  国語75点  算数52点  社会58点 理科55点

地味であるが、よく見ると苦手の理科が上がっている。補習してきた甲斐があった。本番の模試でも頑張って欲しい。


充   国語53点  算数48点  社会40点 理科38点

退塾の懸念もある中、まだ先が見えず。ただ、今週はラグビーの試合の関係でえらく疲れていたらしい。7月で大会が終わるそうで、そこから受験に専念となるそうだから、変わってくることを期待しよう。


単に塾の授業内でやった過去問に過ぎず、あまり確定的なことは言えないが、それでも補習が効いてきた感じはあって、そこはよかった。となればナナ、りる、さらに充の補習を新たに考えてみるか。そのためにも司馬校長には工夫してなんらかのお手当があるように頑張ってもらおう。




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