翌朝、宿を出て帯広市内に向かった。帯広には3年前、道内の林道で転倒し骨折したときに大変お世話になった友人がいる。彼とも30年以上のつきあいだ。大学の同級生だが大学で見たことは一度もなく、学外で芝居やイベントやライブでつきあいがあったのみだ。それぞれが上京した年の25歳の時、
「一週間ほど泊めてくれへんか?」
と言ってきて以来、半年間6畳一間のアパートに男二人で暮らしたことがある。彼はその数年後、世界中を放浪の旅に出てその間に僕は結婚をし、帰国後、彼は新しい仕事に就いた。そしてさらに数年後、帯広での生活を始めて現在に至る。
そんな彼と3年ぶりに会う場所は、帯広の名所の一つ、ばんえい競馬の帯広競馬場だ。今回、知らないところを訪ねていこうという目的のひとつとして選んだのだった。途中の道中(160kmほど走る。道内はほんとに広い)、足寄のとっても美味しいトウモロコシを買って東京に送る算段になっている。2年前の雨中の走行で、体が冷えきった僕は作物の即売所でたき火をしているあの農家さんに立ち寄って暖をとらせていただいた。同時に車できれいなご婦人がやってきて驚く程たくさんトウモロコシを買っていった。彼女はなんと羅臼から来ているという。車でざっと4時間の距離である。曰く
「ここのトウキビは特別ですよ。ほんとに美味しいから是非召し上がってください。私、毎年買いに来てるんです」
それならば、と試食のつもりで少し切ってもらったのを
「焼くんですか、ゆでるんですか?」
と聞いたら
「あ、生でどうぞ」
と即売所のご主人に言われ、びっくりした。生でいけるんだ。と、食べてみてまたびっくり。こんなに美味しいトウモロコシは初めてだ!それ以来、ここのトウモロコシを楽しみにしている。
IMGP0183.jpg
いい笑顔だなあ。今年もありがたくいただきます!

帯広は都会だが、周辺はものすごく広大な田園風景が広がっている。
IMGP0179.jpg
典型的な農場風景。防風林が北海道らしさをかもしだしている。

IMGP0184.jpgこれも夏の後半からよく見かけるロールベイル・サイラップという牧草をラップでくるんで発酵させるもの。これをタイトルに「ロールベイル・ギグ」という曲を友人の中田太三(太ちゃん)が作っている。昔はサイロで発酵させていたが、いろいろ危険があるらしく、今はこのラッピングが主流なんだそうだ。ラッピング時に雨で濡れるとダメなそうで、作業は天候に大きく左右されると聞いた。天気予報がはずれて大損害、という年もあるらしい。

走っていくうちにだんだん都会の道路になっていく。車が増え、景色も変わる。道内のツーリングではめずらしく排気ガスの匂いを感じながらの走行となる。目指す帯広市街が近づいてきたのだ。
少し道に迷ったものの、ほぼ順調に目的地に着いた。
IMGP0187.jpg
ここが今や国内唯一のばんえい競馬場だ。ばんえい競馬とは普通の競馬と違って、馬が騎手を乗せたそりを引いて進む独特のスタイルをもつ。これを動物虐待とかいう人もいるらしいが、僕は個人的にそうは思わない。人馬一体で開拓時代を生きぬいてきた文化と誇りを感じる。さて、場内で待ち合わせをして3年ぶりに友人と会った。
IMG_0212.jpg
カメラを向けるとこんな表情になった。元映画関係の仕事をしていた彼らしいショット。
花火大会や市内のイベントなどをプロデュースした際にここを使ったこともあるという彼が場内をつぶさに案内してくれた。僕は競馬をはじめギャンブルは全くやったことがない。乗馬を少しかじったことがある僕は馬に対する親近感はあるのでただ観戦してみようと思っていたが、第2レース(第10レースまであったと思うから、実際のところ前座の前座である)に出走するある馬の名前を見て心にピ〜〜ンときた。その名も「ヒヤヤッコ」牝馬の2才。2才馬というから人間で言えば、幼稚園かピカピカの一年生くらいの年齢だ。この子に決めた。生涯初の馬券購入はこのヒヤヤッコ単勝にいつものように400円(飲んでる時の話)をかけた。
ヒヤヤッコ馬券
レースの名前が面白い。
友人についていってパドックにいった。
IMG_0217.jpg
なかなかしっかりした馬体だし、チャーミングな顔だ。たのむぜベイビー。

レースは直線状のコースで行われ、途中に2カ所山越えがある。この直前で停まって呼吸を整える作戦もあるそうだ。重いそりを引いているからいかに馬といえども走行スピードは人が早足で並走しながら応援できるくらいだ。実際コースの手前に馬と一緒に歩いて応援するためのスペースがとってある。第1レースは競技の全体を知るために客席から観たが、第2レースは馬券も買ったし、友人にすすめられて応援スペースにも行ってみた。さすがに迫力満点だが、誇りも高いし砂ぼこりもすごい。えらい砂をかぶって客席に戻ってみたら、なんと二つ目の山を越えた辺りでヒヤヤッコがトップ集団に躍り出た!
IMG_0224.jpg
写真では確認しづらいが黄色いゼッケンの5番がヒヤヤッコだ。いけ〜〜!!ヒヤヤッコ〜〜〜!!
ここで彼女が勝ったらいくらの払い戻しになるのかわからない。なにせ初めてだし、名前だけで選んでいるからくわしいことは一切無視だ。しかし、こんなに僕が応援に燃えるとは知らなかった。
ゴール直前でついにトップに立った彼女だが、なんとゴール寸前でストップ!騎手が鞭を入れても全然動かない。よっぽど疲れたと見えて立ち尽くすのみ。なんとかゴールしようという意思が全く感じられない。2才なんでひょっとしてレースの意味がよくわかってないのかもしれない。
「もうやだ!」
そんな感じで突っ立ったまま、どんどん抜かれていき、やっと動いてゴールしたときは何位なのかもわからない集団の中だった。あちゃ〜〜。でも面白い。競馬ファンの気持ちが少しだけわかったような気がした。
このレースの優勝馬が表彰に戻ってきた、というか連れてこられたとき、めちゃくちゃ嫌がっていた。多分、レースの勝ち負けとかまだわかっておらず、みんな厩舎に戻るのに自分だけ連れてこられるのが訳わかんなくてゴネていたのだろう。
「なんでボクだけおうちにかえれないの〜〜。やだ〜〜〜」
そんな感じだった。馬は非常に知能の発達した生き物だ。重賞レースに出るような成熟した馬ならことの意味を十分に理解している。勝った馬がお披露目で大観衆の前に出るときも、自分が何を成し遂げたかよくわかっているそうで、実に誇らしげな表情をしている。これに比べて2才馬となるとまだまだお子ちゃまで、レース中もみんなが走っているから一緒になって「ワ〜〜〜〜イ」って走っている馬がかなりいるそうだ。レースの最中に何か気になるものを発見して「んんん?」と止まってしまう子もいる(これを物見という)。
そんなこんなで人生初の競馬を楽しんだ後、早めに切り上げて、友人と一緒に然別の近くの温泉にいくことにした。彼は明日の仕事が早く泊まれないので、お風呂に入るだけ(彼は大の温泉好き)で帰るため、車とバイクで行った。
ネットで泉質が最高にいい、との評判を見て事前に予約を入れておいた。かなり山のなかにあるらしく、日が落ちないうちに山道を抜けられるように、名残惜しいが帯広競馬場をあとにした。




スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://goinghome153.blog76.fc2.com/tb.php/223-5fbdb4d7