目を覚ますと宿の朝食ができている時間だった。早速、食堂でいただくことにして、食後、宿の外に出て山に向かって尺八の練習(ロングトーン)を始めた。しばらくして、部屋にもどろうとしたら、聞こえていたらしく宿の人に声をかけられた。リクエストにお応えして、古典本曲を一曲ご披露した。ひとりでも多くの人に興味を持っていただくことは大切だし、ありがたいことだ。さて、今日はいよいよ帰路につく。帯広に戻ってお土産を買って、夕方までに苫小牧東港に到着すればよい。かなり時間的にも体力的にも余裕を持たせてある。10時に宿を出て走り出した。そろそろだなと、わかっていたことだが、実はこの時点でガソリン不足のコーションマークが着いた。出発前に地図とipadで一番近いガソリンスタンドを見つけてあり、これを目指すことにした。夕べ、苦労した山中のクネクネ道を下っていかなければならない。苦労したとは言っても昨日は所詮登り道だ。下りはもっと気を使う訳で、さらに慎重さが必要だ。幸い、よく眠れたので、体力的には問題なかった。ゆっくり下っていくと昨日はわからなかったが、併行している川がなんとも魅力的だ。釣り道具は東京に送り返してあるので、釣ることはできないが、安全そうなところを見つけて、バイクを降りて川のようすを見てみた。急斜面の渓流で、魚影やライズ(魚が水面直下に出てくる波紋など)は確認できなかったが、久しぶりに渓流釣りをやってみたくなった。元々、フライフィシングを渓流で始めて(多摩川などでコイも釣っていたが)イワナ達と渓谷の川で遊ぶのが原点だった。それが北海道を知り、広大な平野を流れる川、そして湖での釣りに移行して久しかった。魚の野生度、大きさが半端じゃない北海道に魅せられて、それ以外のフライフィッシングをしなくなっていた。「来年は東北に行こう」。三日前に出会った同世代のライダーの方の話しも思い出しながら、自然にそんな言葉が出た。
 山のクネクネ道を出ると、北海道らしく見渡す限りの平地が広がっている。市街地に至るまではずっと農地だ。その中で一番近いガソリンスタンドに駆け込んだら、なんと休みだった。今日は日曜日なのだ!曜日の感覚がまるで吹っ飛んでいたのでうかつだった。そうなのだ。北海道では全部じゃないけど、日曜日に休みになるガソリンスタンドが結構あるのだ。う〜〜ん、まだ大丈夫だろうけど少し不安になってきた。北海道はガソリンスタンド同士の距離がものすごく空いている。とてもバイクを押して歩ける距離じゃない。そこから最短の別のガソリンスタンドを目指して走ったら、ここもやっぱり休み。一縷の望みを託してもう一軒にたどり着いたが、そこもロープが張ってある。「あ〜〜、ついにやってもうたか・・・」と思ったがよく見ると貼り紙があって、「むかいのコンビニまで声をかけてください」とある。バイクを降りてコンビニにいってみると、「はいはい」と普通に対応してくれた。どうやらコンビニの人がスタンドと両方を経営しているらしい。こんな形式もあるんだなあ、と驚いたが、お蔭でガソリンの方はなんとかなった。そこで、えらいことに気が付いた。なんと夕べ泊まった宿の部屋のかぎをポケットに入れたまんまであった!なんという不覚。早速、宿に電話したがつながらない。時間は余裕がたっぷりあるので、宿まで引き返すことにした。本当に僕はこういうバカをやらかしてしまうから、ダメなんだ。申し訳ない気持ちを胸に、さっき下った山道をまた登っていった。あせると事故になりかねないので、「慎重に、慎重に」と自分に言い聞かせながら登った。宿に着いたら、ずっと応対してくれていた女性が、携帯に電話してくれていたことがわかった。バイクはこの辺が不便で、走行中はまず携帯にかかっても気付かない。お詫びを言って鍵を返したら、笑顔で「こちらこそ出発されるときに気付きませんで申し訳ございませんでした。わざわざ戻ってきていただいてすみません」と言われ、心がやすらいだ。

 結局、あの山道は2往復したことになる。さすがに慣れたというか、少しワインディング走行に自信がついてきた。前にもいったが、油断は禁物だがビビりながらの走行もよくない。まあ、たくさん走っていくうちにカンが戻ってきた、というところか。さて、山道の終わりに立つと、そこは然別湖へ向かう分岐点でもあった。せっかくなので、湖までいってみることにした。今度の登りはきれいに舗装された2車線道路で、快適そのものだ。なんの不安もなく、広がっていく景色を楽しみながら走っていった。峠の途中に十勝平野を一望できる展望台があって立ち寄ってみた。
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ipadでパノラマ撮影もしたが、ここは本当に素晴らしい見晴らしだ。大きな北海道の一部でしかない十勝平野だが、それでもこのでかさ。本当に全道の広さは僕の想像力を超える。

 途中、こんな色の池があった。摩周の神の子池もそうだが、銅分が影響している(?)のかよくわからないが、きれいな青色をしている。IMG_0242_201603211815068c0.jpg

 然別湖には予想より早く着いた。確かに美しい景観であったが、残念なことに僕の写真ではうまくそれを撮れていなかった。ここにはエゾイワナ(アメマス)の固有種「ミヤベイワナ」という緑っぽい色をした鱒がいるそうだ。非常に興味はあったが、もし釣り道具をもっていたとしても、出会う確率は低いように感じた。もしかしたら禁漁期間なのか、釣りをしている人も見かけなかった。行き当たりばったりで見れる魚ではないだろう。という訳で然別湖をすぐに後にして、帯広へと向かった。天気は晴天。山中では爽快だったが、市街地に入ると蒸し暑く感じた。北海道の市街地は大抵、格子状になっていて、道は分かりやすいはずなのだが、僕の方向音痴の方が勝ったようで、随分迷ってしまった。お土産に六花亭のマルセイサンドを買って、自分は店内限定のサクサクパイを食べよう、と計画していたのだ。僕は甘いものは好きであるが、自分で買って食べることはほとんどない。お酒や美味い魚ほどには興味がないのである。しかし、せっかく帯広に来たのだから、という動機であった。方向音痴も花が咲き、なんと市街に入ってから1時間もかかって、ようやく六花亭の本店にたどり着いた。店内は思いの外、広く、たくさんの人でにぎわっていた。そう、今日は日曜日なのだ。ここでお土産を予定数買い、サクサクパイを少しだけ並んで買ってみた。
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いや〜確かに美味しい。これは簡単に食べられない方が、なにかありがたい感じがする。

停めてあるバイクに戻る途中、車道を閉鎖して何かのイベントの一環としてジャグラーのパフォーマンスやブラスバンドの演奏などがあったが、北海道に来てまで東京と似たようなものを見る気がしなくて、素通りした。写真も撮らなかった。
どうもツーリング中に都会に来ると調子がくるってしまう。北海道とはいえ、今日の日差しとアスファルトの照り返しだとライダージャケットでは汗だくになってしまうし、早く市街地から逃げ出したくなった。

 帯広を出てすぐに、さっきは暑くて仕方なかったメッシュジャケットでは今後は寒くなってきた。路肩で3シーズン用のジャケットに着替えて走り出したら、風景も変わった。ようやく気分がノッてきた。やっぱりこうでなきゃ。そう思いながら道東自動車道をいつもと違って占冠布で降りて、時間に余裕があるので少しでも北海道の自然を感じておきたいと思って、日高まで南下することにした。山から平野を通ってすぐに海の近くまで来た。ここで西に進路をとり、下道をゆっくり走って苫小牧東港まで来たときには、夕方近かった。いつもと違う方向から港に入ったが、特に迷うことはなかった。方向音痴の僕にしては上出来だった。フェリー乗り場のバイクの列にModerato を置いたら、疲れがぐっと湧いてきた。今日の疲れはちょっと違う感じがした。どうやら、都会の喧噪に疲れたようだった。でもそのときははっきりそういう意識もなく、ただボ〜っとしていた。フェリーのお風呂でのんびりして、食堂でカレーを食べてビールを飲み、その後は何もせずに早めに眠った。

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