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子供の頃、よくテレビで森繁久彌氏が出演しているドラマを観たものだった。
実は彼は僕の生まれ育った枚方市の出身で、彼の生家とおぼしきお屋敷を自転車の遠乗り中に発見したときは、その大きさにびっくりしたりした。

テレビで見る彼は、その言動が僕の父そっくりで、母や弟とともに
「おとうさんみたいやん。」
とよく笑っていた。
風貌もなんとなく似ていなくもなかった。

僕の母は、僕がいうのもなんだが大変美人で、独身時代、一時東宝映画の新人女優みたいなことをやっていたときく。日本映画の名優、原千佐子さんが同期だったとか。
ただ、母には役がつかず、大スターの淡島千景さんのカメラリハ用の代役なんかをやっていたのだそうだ。(ちなみに僕は父親似だ)

森繁久彌、淡島千景の二人が夫婦役をやった映画がある。
「夫婦善哉」という。
昭和初期の大阪を舞台とする、織田作之助の名作小説を映画化した珠玉の作品だ。
音楽は團 伊玖磨が担当。と、さっき調べてわかった。なるほど、やっぱりどことなく品格があったような気がする。これはこの映画にとって重要な要素ではないかと思う。

大店の若旦那・柳吉と、曽根崎新地の人気芸者・蝶子は、かけおちをした。
親父から勘当された柳吉は、とたんに貧乏になり、蝶子の稼ぎで二人苦労しながら生きていく。いろんな商売をやっていくが、「関東炊き屋(かんとだきや)」をやっていたのが何故か印象に残っている。

貧乏しながらもボンボン気質がぬけない柳吉は、昔のいきつけのリッチな店で飲んじゃったり、一念発起してがんばる宣言をしてもすぐへなへなになったり、まったくもってダメダメである。
それを気丈に明るく支えていく蝶子。どこに惚れたのか、不思議なくらいだ。
なかなか長続きしないでいろんな商売に手を出すが、うまくいってもいかなくても、夫婦の仲だけは変わらず睦まじいのであった。

こういう役をやらせたら、森繁久彌にかなう役者もいないだろう。
道楽もんでダメダメだが、どこか憎めず応援したくなっちゃう奴。ただ、ダメダメなんじゃなく、どこか品のよさがあり、「本当はもっと・・・のはずな・・・」という微妙な空気を見事に出している。

藤山寛美が
「春団治と夫婦善哉だけは、森繁はんにかないまへんなあ。」
と言っていたのを思い出す。

子供の頃に初めて観たときは、よくわからなかった。が、なんとなくいとおしいような不思議なにおいを感じてはいた。
その後、10年に一度くらいの間隔で、この映画が気になるときがある。
その度に、新しい名シーンを発見してまた好きになる。
これって、名画の証だよね。
初めて観たときからずっと好きな台詞は
「たのむで、おばはん。」

久しぶりにTSUTAYAで探してみようかなあ。
この映画を語る人も少なくなったのではないかな。
そんなことを思い、書いてみた次第だ。
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